大人の工場見学 -新潟篇- 2022
例年より早い梅雨明けで、青空がひろがる6月某日。
私たちは82課のルーツであり、人気シリーズRELAxION®等を生産していただいている、新潟産地を訪問しました。
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ーお米と繊維の町ー
見附、栃尾地区
空港のある海沿いから車に乗り、一面に広がる田園を南下すること1時間。
帝人フロンティアDGがある新潟県見附市は、人口39,000人、新潟県のなかでも中腹に位置する、一番面積の小さな市です。
信濃川水系の刈谷田川が流れ、豊かな水に恵まれた繊維とお米の町です。
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新潟と繊維
ー多様な産地ー
新潟の織物の歴史は古く、明治のころからと言われています。豪雪のため農業が出来る時期が限られていて家の中にこもりやすいことや、水がきれいなことなど自然の条件から、必然的に繊維生産が広まっていきました。新潟の中にも複数の繊維産地があり、越後縮布の小千谷・魚沼地区、絹織物の十日町地区、合繊織物の見附・栃尾地区、ニットの五泉地区と幅広く発展してきました。
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新潟と合繊の歴史
ー絹からレーヨン、ポリエステルへー
はじめは家族単位で、手織りで生産していた織物が、大正のころから力織機が導入され今のような工場での量産、産業に発展していきます。当時主要だった絹糸、絹織物の輸出は好調でしたが、1929年に世界恐慌が始まると、絹が贅沢品として軍事用のみとして制限されてしまいます。そこで見附、栃尾地区は、軍事用の絹織物と並行して、帝人が絹の代用品として販売していたレーヨンの織物開発をはじめます。不況下でもレーヨンの生産は伸び、1935年には輸出を中心に絹につぐ重要織物になります。新潟の化合繊の歴史の始まりです。戦後もしばらく絹織物の制限は続き、絹織物中心だった産地は苦しみましたが、長期化した戦争により衣服が不足、また戦後の復興のため繊維製品の輸出による外貨獲得が必要となりスフ(レーヨン)生産は大きく推進されました。1957年、帝人東レ両社が英国ICI社と契約し、ポリエステル製造技術を導入、”テトロン®”として国産ポリエステルの製造を開始されると、栃尾では洋装への転換から、広幅織機を導入。従来から絹(超繊維)と綿(短繊維)の両者を扱うことができ、地域内に撚糸、織、加工までの設備が揃う見附、栃尾地区は、帝人が開発する新原糸の試験場として様々な生地を開発し、技術、開発力を高めていきました。
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帝人フロンティアDG株式会社
〒954-0082 新潟県見附市柳橋町336−1
82と新潟 ー82課の由来ー
そんな新潟(見附、栃尾地区)は、私たち82にとって特別な産地です。1968年、近藤商店(現帝人フロンティアDG)と瀧定名古屋が合繊素材の取引を開始したことが記録されています。レーヨンの問題点であったしわや、洗濯時の縮みを改善したテトロン®は瞬く間に人気になりました。呉服の商いが中心だった瀧定名古屋もその流れを受け、紳士、婦人合同で1課のみだった合繊部を拡大。東レ素材のみを扱う第一課、帝人素材のみを扱う第二課として分課します。こうして82課の前身、婦人合繊第二課が誕生しました。さらに、その後1980年代後半から、ニューシルキーや、梳毛調などの天然繊維の特徴に近づけた新合繊糸を各社がこぞって開発し、新合繊ブームが到来。帝人素材を専門に取り扱う82は新潟産地と密接に協力しあい、帝人が次々に開発する新しいポリエステル糸を使用した織物を一緒に開発し続けてきました。今も残る様々なロングセラー素材のもとはこの頃誕生しました。82と新潟は一緒に成長してきたのです。
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新潟合繊の特色 -レピアー
こうした歴史から、こだわりの詰まった合繊素材を長年作り続ける新潟産地。その素材を生み出す背景として、帝人フロンティアDGでは自社で整経、撚糸、約60台のレピア織機を保有しています。よく比較されるウォータージェット機は、高速でコストダウンに適しているのに対し、レピア織機は合繊の中では低速です。そのため、ヨコ糸に強撚糸やストレッチ糸、天然繊維を打つことができ、ボトムやセットアップの素材に適しています。レピア織機は他の織機に比べ組織などの設定の変更が容易なことから、多品種小ロット生産が可能です。他のメーカーがユニフォームや資材などの安定した大量生産を優先する中、ファッションに特化した産地として高い開発力を築きあげました。
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生地は”人”が作る
高性能な設備、上質な原料、長年蓄積されたノウハウ。良い生地を作る要素は様々あるけれど、結局のところ生地は人が作っています。
もちろん鶴の恩返しのように手動で織っているわけではありませんが、緯糸の補充や、組織を変えるための設定変更、糸が切れたりした場合の確認など自動織機になった今でも人の手で丁寧に行われています。
事務所の入り口には社員が設置した#テイク布(フ)リーコーナーが。
地元の@三条ものづくり学校と協業し、残布を有効活用しモノづくりを応援する取り組みを行っています。
ハギレであっても自分たちの作り出したモノへの愛着をもち、出来る限り活用したい!という想いに、仕事へのプライドを感じました。
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